今年の十五夜は9月25日。お月見を美しく彩る、お供えのしつらえ方

もうすぐ、秋の訪れを感じるお月見の季節。

お月見といえば、お団子やススキを飾り、夜空に浮かぶ美しい月を眺める風景を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。

古くから続くこの風習は、収穫物への感謝や豊作の祈りが込められています。その想いを示すため、神様にお団子やお餅などのお供えを捧げるようになりました。

一年の中で最も明るく、まるく月が輝く十五夜。そんな日に向けて、今年はお供えの飾り方にも少しこだわってみませんか。

今回は、お月見のお供えを美しく引き立ててくれる「三宝(さんぼう)」について、魅力と暮らしへの取り入れ方をご紹介します。

今年のお月見、どう楽しむ?

十五夜は、旧暦8月15日(今年は9月25日)の夜に月を眺める風習です。

「中秋の名月」とも呼ばれ、お団子やススキ、里芋などその時期に収穫されるものを月が見える位置にお供えし、美しい月を眺める行事として、古くから日本で親しまれてきました。

お供えには、秋の実りや自然の恵みに感謝する意味も込められています。

だからこそ、お供えものはただ置くのではなく、きちんと整えて飾る。そのために使われてきた道具のひとつが「三宝」です。

お月見の”あれ”三宝とは

三宝とは、神事などでお供え物を載せるために使われてきた台のこと。古くから日本のお供え文化とともに受け継がれてきた、歴史のある道具です。

その始まりは、約700年前にさかのぼります。後醍醐天皇が奈良・吉野へ都を移した際、献上品を載せる台として作られたのが起源と伝えられています。

三宝(三方)」という名前は、台の三方向に「眼」と呼ばれる穴が開いている特徴的な形に由来します。

三宝のなかでも、台座を低くつくったものは「遠山三宝(とおやまさんぼう)」と呼ばれ、コンパクトで家庭でのお月見に適しています。この記事で写真とともに紹介しているのは、この遠山三宝です。


お月見では一般的に、十五夜にちなんだ15個のお団子をピラミッド状に積み上げるときに使用します。

お供えものを三宝に置くことで、食べ物を丁寧に扱い、感謝の気持ちを表す。そこには、日本人が季節の恵みを大切にしてきた文化が息づいています。

お月見を素敵に見せる、ちょっとしたひと工夫

季節のお供えは、ただ並べるだけでもよいものですが、少し高さを出したり、器を変えたりするだけで印象が大きく変わります。

例えばお供えものは、月の見える側から、ススキや秋の草花→お団子や果物などの順で置き、月がよく見える配置にしましょう。

お供えを載せる器は、木製の三宝なら、木の温かみがお団子や秋の植物によく馴染むだけでなく、いつもと変わらない家のなかに小さな「お月見のしつらえ」が生まれます。

これだけで、より季節を感じる特別な空間になる気がしますよね。

その他にも、お団子の下に和紙を敷く、竹のかごを使用して栗や里芋を飾る、黒塗りや木製のお盆を使うなど、少しの工夫でお供えものが美しく見えます。

写真に残したくなるような、美しいお月見を楽しみたい方におすすめです。

暮らしを彩る多彩な用途

お月見で使用した三宝の用途は、お月見だけに限りません。一年を通して訪れる、さまざまな季節の行事や普段の日常に取り入れることができます。

お正月に
お正月のお供えや季節の飾りを載せて。新しい一年を迎える特別な空間づくりにも活躍します。

節句に
桃の節句や端午の節句など、お月見以外の季節の行事にも。季節のお花や和菓子などを載せれば、行事をより身近に感じられます。

神事・祭事に
季節の節目や大切な儀礼の場にも。お供えものを美しく整えて載せれば、厳かな雰囲気を演出し、特別なひとときを引き立てます。

神棚へのお供えに
お米や塩、酒、水などを整えてお供えすることで、日々の感謝を伝える場にもなります。

普段の暮らしにも

季節の果物や和菓子を載せる台として使うのもおすすめです。

「今日はこの果物がおいしそう」「季節のお菓子を買ってきた」そんな日常の小さな楽しみを、三宝が少し特別なものにしてくれます。

伝統的な道具だからといって、特別な日にしか使えないわけではありません。むしろ、日々の暮らしの中で使うことで、季節を感じる機会が増えていきます。

作り手は全国に5軒ほど。吉野に残る三宝づくり

現在、三宝の作り手は全国でもわずか5軒ほど。そのうち4軒が、奈良県の吉野地方に残っています。

そのなかのひとつ、奈良県吉野郡下市町の吉谷木工所は、吉野ヒノキを使って三宝を作り続けている工房です。

神饌などを供える器にふさわしい「吉野ヒノキ」

三宝に使われる吉野ヒノキは、急峻な地形と湿潤な気候、そして密植・間伐を徹底する手入れによって育つ、まっすぐで年輪の緻密な美材です。

長い歳月をかけて育つからこそ木目は端正で、色艶の美しさも他のヒノキより際立つと言われています。

心材は淡い紅色で、辺材は清らかな白。その凛とした表情には、神具にふさわしい品格を器にもたらします。清涼感ある香りや、耐久性の高さも吉野ヒノキならではの魅力です。

日本遺産の職人技

吉野ヒノキを使った三宝(さんぼう)の製作技術は、2016年に日本遺産に認定された奈良県吉野郡下市町の伝統文化です。

三宝づくりでは、約1cmの厚さにした板に細かな切り込みを入れ、木を折らずに曲げていきます。

切り込みが浅すぎると木が硬くなり、深すぎると割れてしまう。0.7mmを残すことで、曲げやすさと強度の両方を保つことができるのだそうです。

木を折ることなく美しく曲げるための繊細な技術が、今も受け継がれています。

今年の十五夜は、少しゆったりと

今年の十五夜は、三宝を取り入れて、いつもより少し丁寧なお月見を楽しんでみませんか。月を見上げるひとときが、きっと心穏やかな時間になるはずです。

三宝は、お月見をはじめとした季節の行事だけでなく、日々の暮らしにもそっと寄り添ってくれる道具です。

季節の食材や飾りなどを丁寧に整えて載せるだけで、いつもの空間に特別な趣が生まれます。吉野ヒノキのように、素材にまでこだわってみるのも素敵な選択肢のひとつでしょう。

ぜひ、お気に入りの三宝を見つけて、暮らしのなかに取り入れてみてくださいね。